テニスラケットの科学(359) :テニスラケットの科学(86)の補足

● 下から上へ振り上げた腕を、インパクト直前で、身体側に一瞬  引き付ける(上から下に振り下ろすように見える)ことにより、ラケットヘッドが加速して下から上へ振り上がり、ヘッド速度がインパクトで最大になることを示しています。
 したがって、打球速度とスピン量が最大になります。
 下から上へ振り上げた腕を、一瞬、上から下に振り下ろすタイミングが重要なのでしょう!
● ナダルはサービス練習で「パラメトリック加速」に相当するようなアドバイスを受けているそうです!
 ジョコビッチも、サービスは上から下に打つと言っていたそうです!
 天才たちの言葉には、ボーっと生きている我々のような凡人には簡単にはわからない奥の深い物理的な意味が含まれているようです!
● つまり、ナダルやジョコビッチがコメントしていることは、物理的にきわめて理にかなっており、サービスにおいて、振り上げた腕をインパクト直前に、振り下ろすと、ラケット・ヘッドが、瞬間的に振り上がって、ボールをヒットするということですね!
(追加)
● ラケット・ヘッドが下から上に振りあがるときに、ボールに縦回転(トップスピン)がかかりますが(ストロークの場合と同じです)、しばしば、指導書では、腕の動きとラケットの動きを混同して、サーブは、腕を振り上げる、あるいは下から上に打つという記述が見られます。しかし、プロは、腕を振り降ろしてヘッドが振り上がるときにインパクトをしているようです。
*テニスラケットの科学(129) テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(23):「理系なテニス」(1) ナダルとジョコビッチのサーブ(理論と体感)https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-129/  参照
● サービスの場合を簡単に考えると、肘や手首の角度を一定にして、肩を「支点」にして肩に回転トルク(力点)を与えて「腕とラケット」を振る回転運動とみなすことができます。
 肩(支点)にトルク(力点)を加えると回転角速度はゼロから加速しますが、肩の速度は小さくても、支点から遠い作用点のラケットヘッドの速度は拡大されて加速されます。ただし、実際は、肩・腕の回旋などを含みますからもっと複雑です。
 重要なのは、肩に回転トルクを与える際に、振り上げるのと、振り降ろすのでは、加速のしかたが大きく異なるということです。
 腕(3キログラム)とラケット(300グラム)の重量を振り降ろしながらトルクを出す方が、3キロ以上の重量を振り上げながらトルクを出すよりは、はるかに速く腕とラケットを振ることができるはずです。