テニスラケットの科学(458)
研究の思い出
:機械系学生の情報誌・メカライフ特集
:「スポーツ工学」(1996年)
:テニスのインパクトの謎を解く (概要:その6)
・図7は、宙づりラケット(ネットにぶら下げる)にボールを衝突させたときのボールの跳ね返り速度(反発速度)を示しています。
横軸はストリング面上の衝突位置、縦軸はボールの入射速度に対する跳ね返り速度の割合を示しています。
私は、反発係数と区別して、これを反発力係数と呼んでいます。
*反発力係数は、反発力の大きさを示すもので、それまで仮想反発係数と呼ばれ、反発係数と紛らわしかったので、日本語論文では1998年に、国際会議では2002年に川副が定義したものですが、その後、米国プロ・ストリンガー協会の機関誌論文でも Rod Cross らにより提案され、使われています。
・反発力係数は、衝突位置における反発係数7,衝突位置に換算したラケットの重量およびボールの重量により決まります。
反発力係数の予測値(シミュレーション結果)は実測値の特長をよく表しています。
・反発力(ボールを跳ね返す力)は、ラケットの重心に近い側、すなわちラケット面の根元側ほど大きくなります。
・打球速度は、先端側ほど速い打球位置の速度と反発力係数の兼ね合いで決まります。
●(参考文献)
(1) 川副嘉彦、手で支持したテニスラケットの実験的同定とボールとの衝突における振動振幅の予測、
日本機械学会論文集、 C編 第61巻584号、 1995年、 pp.1300-1307.
(2) Yoshihiko KAWAZOE, Effects of String Pre-tension on Impact between Ball and Racket in Tennis,
Theoretical and Applied Mechanics, Vol.43(1994), pp.223-232.
(3) 川副嘉彦、ラケットはどう選ぶべきか,ラケットの科学II-⑧、
月刊テニスジャーナル,13巻4号(1994年4月号), pp.101-106.