テニスラケットの科学(499) (備忘録) テンションとプレイのマッチング 1995年版(14): Part5  テンションの秘密を科学で探る 実験結果と実際のスウィングの印象の間で、 ギャップはなぜ 起こるのか ➉

(9) オフセンター打撃では、緩く張った方が反発が良いのは、フレーム振動によるエネルギ・ロスが少ないから
“ 衝突速度が15m/s(時速54キロ)以下では、ストリングス張力が小さい方が接触時間は長くなっており、ボールがやや長い時間で変形するから。エネルギー・ロスは小さくなるように思えるが、じつは、ボールとストリングスの合成バネは柔らかめであり、ボールのエネルギー・ロスは変わらないことになる。
 図10は、オフセンター(ストリング面の根元側)でのインパクトにおけるボールの反発を予測した結果である(*1)。
 5種類のラケットを示しているが、ラケット PROTO-EX110(全長685ミリ、打球面積688平方センチ、質量366グラムwithストリング、重心位置はグリップ端から325ミリ)のテンション55ポンド相当と 67ポンド相当の2種類を比較していただきたい。
 オフセンターでは、ストリングスを緩く張った方が反発が良い。
 これは、フレーム振動によるエネルギー・ロスが小さいからである。
(*1 補足:縦軸の目盛は拡大してあることに注意してください。反発の差が大きいように見えますが、実際にはあまり大きな差ではありません。)
 一般には、ストリング面センターでのインパクトではフレーム振動は小さいが、ラケットによっては、衝突速度が大きいときに、振動数の高いストリングスの振動と一体になってフレームが振動する(*2)場合があり、このようなラケットではテンションが高いときに反発がかなり低下することがあり得る。
(*2 補足:フレームの3節曲げ振動)

(続く)
(参考資料)
テンションとプレイのマッチング:Part5
テンションの秘密を科学で探る
実験結果と実際のスウィングの印象の間で,ギャップはなぜ 起こるのか
川副嘉彦,月刊テニスジャーナル 1995年10月号,pp.55-60.