テニスラケットの科学(511)
(備忘録)2020年12月13日投稿
テンションとプレイのマッチング 1995年版(3)  :Part3 最適テンションを探せ!  最適テンションの探し方 その1

(追記1)
●トップストリンガーの「テンション」に関する解説に「異見」あり!

(追記2)
・伊達公子選手は、張り上がったラケットのストリング面を足で踏んで、ストリングをフレームに馴染ませるという話も聞いたことがあります。
 テンションは落ちますが、たしかに、その方が、試合の時のストリングの状態・感覚に近いはずですね!

(備忘録)

“ ――――― 張り替えた直後はボールが飛ばない,といつも感じている人は,要は自分のテニスに合ったテンションより硬い張りを要求しているということ.
 しかし,テンションの低下に伴って,いつかはかならず自分に最適の面圧が訪れる.
 その瞬間を見逃さないようにすることが大切だ.
 伊達公子選手は最初からテンションが落ちるのを見越して,半分のラケットを54ポンド,そして半分を52ポンドで張ったりするという.
 もちろん,試合の前半で52ポンドのラケットを使い,後半で54ポンドのラケットを使うのは言うまでもない.

というトップストリンガーによる記述がありますが,テンションにこだわる選手が多いのは,物理的に「ボールの飛び」に影響するからではなく,音や振動,感触などの感覚の問題だろうと思います.
 感覚に微妙な違和感があるとプレイにも影響しうることは,多くの例からも,容易に想像できます.
 物理的には,一般にテンションと呼ばれているのは,実際にストリングにかかっているテンション(張力)ではなく,ストリングを張るときのマシンの引っ張り荷重です.
 実際にストリングにかかっているテンションは,マシンの引っ張り荷重から,ストリングの縦糸と横糸の間に作用する摩擦力や,糸とグロメットの摩擦力,糸とフレームの摩擦力などを差し引いたテンション(張力)ですから,縦糸,横糸の1本1本のストリングのテンション(張力)は異なりますし,真のテンションは,張り上がった状態でストリングの交差点間のすべてにおいて,テンションメーターなどで(精度が問題かもしれませんが),測定しなければわかりません.
 52ポンドと54ポンドで張ったストリングは,張った直後から時間経過とともにテンションは低下しますし,両者の物理的な差は,誤差の範囲内ではないでしょうか?
(参考資料)
テンションとプレイのマッチング:Part3 最適テンションを探せ!
 最適テンションの探し方 その1
テニスジャーナル 1995年10月号,p.41.