テニスラケットの科学(542)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(52)
:ストリング・テンションとラケット性能⑤
:ボールとラケットの接触時間のメカニズム

● テクニカル・テニス 常盤泰輔 [訳] 丸善プラネット (2011年):Technical Tennis by Rod Cross and Crawford Lindsey (2005)の訳本” の93頁~97頁に、
”一般的に手でもったラケットでボールを打つ場合の接触時間は0.005秒である” という記述がありますが、正しいとは言いいにくいです!
また、
” ラケットが重くなると接触時間が長くなる” という記述は間違ってはいませんが、実は、
”ボールとラケットのインパクト(衝突現象)における「接触時間」には、「接触時間の長さが決まる物理的なメカニズムと算出方法」が存在する”
のです*。
●ボールとラケットの衝突における接触時間のメカニズム*
 図1は、ラケット・ストリング面中央にボールを接着した系において、インパクト・ハンマでボールを打撃した実験(衝突力波形が取り込める)において、ラケットフレームに取り付けた加速度センサーに出現した 103Hz、 周期(1往復) 0.0097s の固有周期を示しています。
 この半周期、約 0.005 s = 1000分の5秒がこの場合のボールとラケットの接触時間に相当します。
 この場合は、衝突速度、すなわち衝突力が小さくて、ボールとストリング面の変形が少ないので、ボールもストリング面も復原バネとしての強さ(正確には、硬さ、剛性)が小さいので、約 0.005 s 程度になっているのです。
 もっと大きな運動量(重量と速度の積)で、ボールとストリング面が大きく変形すれば、インパクトでの両者のバネの硬さが(したがって、インパクトにおけるテンション、面圧も)大きくなるので、半周期、すなわち、衝突速度が大きいほど、接触時間は短くなります。
・ ”「ボールとラケットのインパクトにおける接触時間」は、インパクトにおける「ボール変形によるバネの強さ」と「ストリングたわみによる面圧(バネ剛性)」、および「ボールの質量」と「ラケットの打点に換算した質量」により決まります。”
(図2参照)

図ー1

図―2

(参考文献)
・* 川副嘉彦、スポーツ用具、 モード解析ハンドブック、pp. 454-461. コロナ社、2000年発行
・ テニスラケットの科学(537)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(47)
:ストリングの太さ(ゲージ)とラケット性能➃
:誤解されやすいインパクトにおけるストリング面の硬さ(面圧、復原バネの強さ)
:インパクトにおけるストリング面は、幾何学的な構造上、たわむほど硬くなる(たわみにくくなる、面圧が高くなる)!
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-537/
 テニスラケットの科学(540)