テニスラケットの科学(565)
:コーポリ・ガット(ポリエステル系ストリング)
:実際にはどのような仕組みで機能しているのか(解説記事紹介)➉
:コーポリ・ガットとの関係(その3)

● コーポリ・ガットとの関係(その3)
・ 2008年にプリンスはPTFE(テフロン)コーティングを施したナイロンガットを発売した.
 プリンスはその後,2011年1月に新しいコーポリ・ガットを発売したが,同社によれば,これはスピンの潜在能力を最適化する特性を分析・特定するための「軍用クラス」のビデオ機器を使用して開発されたとのことである.
 プリンスは,ガットの跳ね返りのメカニズムのタイミングや,そのメカニズムがいかに容易に発揮されるかを直接示しながら,新しいガットは「最適化された動力学および摩擦特性を備え,ガットがずれてから戻るまでの時間は2ミリ秒以内である」と主張している.
・ プリンスはまた,自社のガットはボールがガットに跳ね返されるときの角度,すなわち発射角度を小さくすることができると主張する最初の会社でもある.
 プリンスによると,発射角度が小さいほどボールも浅くなり,速いスイングが可能になるため,スピンをかけやすいということだ.
 しかしこの主張には議論の余地があるだろう.
 なぜなら発射角度が大きくても,それを補正するために選手がラケット面を閉じることで,スピンを増大することは可能だからだ.
 いずれにしても,このガットが期待されている効果を発揮するかどうかは時間が経てばわかるだろう.
・ プリンスの新しい滑りやすいガットは自社で試験した他のコーポリ・ガットに比べ,9 % 増のスピンが得られるとプリンスは主張している.
 それが事実ならば,このガットは平均的なナイロンガットに比べて 55 % も多くのスピンを生み出すことができる可能性がある.
 プリンスの主張を実証するためには独立機関による試験を待つ必要があるが,終始コーポリ・ガットがより多くのスピンを発生させると話していた選手たちに科学がようやく追いついたように思われる.
(注釈:川副)
・ プリンスは、潤滑剤およびストリング交差点潤滑によるスピン増大の論文に関心が高く、研究開発部長の Dr. S Davis からメールをいただきました。
図14 コーポリ・ガットは,スピンだけでなくガットを離れるボールの発射角にも影響を与えるのか

図―14


(続く)
(参考文献)
・(解説記事) コーポリ・ガット(実際にはどのような仕組みで機能しているのか)
ジョシュア・スペックマン  (訳:川副嘉彦)
埼玉工業大学工学部紀要 / 埼玉工業大学図書・紀要委員会(編) 第22号 2011年 pp. 37-45.