テニスラケットの科学(566)
:コーポリ・ガット(ポリエステル系ストリング)
:実際にはどのような仕組みで機能しているのか(解説記事紹介)⑪
:コーポリ・ガットとの関係(その4)

● コーポリ・ガットとの関係(その4)
・ スピンの増大でプロのゲームはさらにパワフルになったのだろうか.
 「強力なスピンをかけることができれば,空力学的作用によってボールを早く着地させることができるため,ボールをさらに強打することも可能になる.
 これは明らかな利点だ」とITFのスチュアート・ミラーは見ている.
・ 「より強力なスピンをかけられれば,ボールを打つときにより強いスイングを維持でき,ボールは加速する.
 だからスピン生成能力を大胆に変革するガットが作り出されれば,選手がそのメリットを活用するのは当然だ.
 選手はラケットをより速くスイングし,より強力なスピンをかけることができるようになり,しかもボールをちゃんとコート内に着地させることができる.」
・ ラファのとてつもなく強力なスピンが,どの程度彼の驚異的なテクニックや運動能力によるもので,またどの程度コーポリ・ガットによるものか,我々が知ることはおそらくないだろう.
 分かっているのは,ナダルが他のどの選手よりも強いスピンのかかったボールを打ち,フォアハンドの総スピン量は1,800~4,900回転/分,平均3,200回転/分ということである.
 ラファの最も重いフォアハンドにおける総スピン量は,ピート・サンプラスの伝説的な重いセカンド・サーブにほぼ匹敵する.
・ また,コーポリ・ガットはどのようなスイング面からでもより多くのスピンを生成するため,ラファは他のガットを使用した場合ほど急角度で,あるいは高速でスイングする必要はなくなる.
・ コーポリ・ガットの効果を考えれば,イースタングリップと90インチのヘッドサイズのラケットを使用するロジャー・フェデラーが,平均的なフォアハンドのスピンはラファより20 % 少ないにもかかわらず,なぜ最大4,500回転/分のフォアハンドを打てるのかを説明できるかもしれない.
図15 実際どれほどのスピンをかけられるのか

図―15


・ フェデラーはナイロンガットでもそのようなショットを打てるかもしれない(このプレーヤーがどれほどの能力を持っているかなど、誰が知り得ようか).
 しかしそのためには,彼のスイングの型を大々的に変える必要があるだろう.
・ いずれにしても,コーポリ・ガットの効果が現実のものであり,ガットのメーカーがそれをさらに効果的なものにし,プロのゲームのみならずあらゆるレベルにおいて,さらに強力なスピンを加える可能性を追求していることにもはや疑いはない.
・ コーポリ・ガットは,驚異的なスピンを生み出す最初の技術革新ではなかった.
 40年以上前にも同様の技術は存在していた.
 1970年代の悪名高いスパゲッティ・ガットは,実際にはコーポリ・ガットよりも多くのスピン生み出すことができたが,国際テニス連盟(ITF)によって禁止されてしまった.
 これらについては,続報に述べる.
(著者紹介)
ジョシュア・スペックマン
 ジョシュア・スペックマンはフリーランスのジャーナリスト.科学者としての教育も受け,子供の頃から大のテニス愛好家である.
 特に,テクノロジーがテニスに及ぼす影響に興味を持っている.
 2011年1月のAtlantic誌の記事 ”The New Physics of Tennis”(「新しいテニスの物理学」)は,コーポリ・ガットがプロのテニスに及ぼす影響について人々の間に関心を呼び起こし,テニス界でこのテーマに関する議論を再燃させた.
 フォトジャーナリストの妻と中国の昆明に暮らす.
(訳者注)
*3 Lindsey, C., String Lubrication & Movement in Spin, Tennis Warehouse University (TWU) Web Pages, March 22, 2011
https://twu.tennis-warehouse.com/learning_center/spinandlubev2.php?fbclid=IwAR3LoXTnGhchiR1EagFPGdjW0-dQMw0cu8JAaLtLvYUTB531eCaN0Udw2VM
(2023年6月26日確認)
(完)
(参考文献)
・(解説記事) コーポリ・ガット(実際にはどのような仕組みで機能しているのか)
ジョシュア・スペックマン  (訳:川副嘉彦)
埼玉工業大学工学部紀要 / 埼玉工業大学図書・紀要委員会(編) 第22号 2011年 pp. 37-45.