テニスラケットの科学(567)
:コーポリ・ガット(ポリエステル系ストリング)
:実際にはどのような仕組みで機能しているのか(解説記事紹介)⑫
:スナップ・バック Snap-backの起源

● 「スナップ・バック Snap-back」という用語をWilson の広告で見たときは、その現象が、我々が「スプリング・バック Spring-back」と論文の中で表現した現象そのものだったので、なぜ、「スナップ・バック Snap-back」という用語が使われているのかが謎でした。
 しかし、ジャーナリストJoshua Speckman 氏の英文解説記事を読み直してみて、翻訳するときは気づいていなかったのですが、確かに
「Kawazoe found that this snap-back of the main strings actually gives the ball an extra kick, which puts extra spin on the ball. Amazingly, the lubricated strings generated 40 % more spin.」
という表現を見て、謎が解けました!
 J Speckman 氏がこの解説記事で初めて、「スプリング・バック Spring-back」を「スナップ・バック Snap-back」と言い換えてくれたのです。
 J Speckman 氏の記事は、米国の伝統のある雑誌「The Atlantic Magazine」、「ニューヨークタイムズのテニスブログというスポーツ欄」、「トリビューン紙ロシア版」,米国の NPR(National Public Radio)などにも優れた記事として取り上げられ,海外では,トップ選手のスピン打法の変化とも関連して,テニスの話題になり、「スナップ・バック Snap-back」という用語が世界的に定着したのだろうと推測します。
 2005年の国際会議において「スピンガットの設計概念を180度変えるべきだ」と主張した Kawazoeの目立たないProceeding論文を探索し,現在のスピン・ガット変革のブレークスルーとなった最初の論文と位置づけ,有力雑誌で取り上げてくれたスペックマン氏には大いなる敬意を表します。
 当時の日本では、一部の人を除いて関心を持つ人は多くはなく(付図参照),このようなことは日本では起こりにくいことのように思います。

図ー1


図―2



図―3


図―4


図―5


図―6


図―7


(参考資料)
・なぜ? ポリ系のガットが人気なのか!?
(特別寄稿)ジョシュア・スペックマン (抄訳:川副嘉彦)、
月刊スマッシュ誌、2013年3月号、pp. 56-57.

・ストリングとスピン(前編)
ジョシュア・スペックマン (翻訳:川副嘉彦)、
月刊スマッシュ誌、2013年8月号、pp.58-59.

・ストリングとスピン(後編)
ジョシュア・スペックマン (翻訳:川副嘉彦)、
月刊スマッシュ誌、2013年9月号、pp.58-59.

・ ラケットのガットとトップスピン
ジェフ・マクドナルド,川副嘉彦(訳)
埼玉工業大学工学部紀要」第21号,pp. 39-40 (2011)

・The Kawazoe Study,
Tim STRAWN, GSS Alliance: International Alliance of Racket Technicians, 2011年1月10日

・(解説)川副論文について、

 ティム・ストローン、 (訳:川副嘉彦)、
 埼玉工業大学工学部紀要 / 埼玉工業大学図書・紀要委員会(編) 第22号 2012年 pp. 35-36.

・テニスラケットの科学(303)
:プロのストリンガーも知らないストリング:「スナップバック」の源流と用語の起源(8):New String Theory(新しいストリング理論)6
● ストリング研究開発の新しい展開(その2)

(参考文献)
・Copoly Strings: How Do They Really Work?
Joshua SPECKMAN, Tennis player, Volume 7 Issue 2, May 2011

・ コーポリ・ガット(実際にはどのような仕組みで機能しているのか)
 ジョシュア・スペックマン  (訳:川副嘉彦)
 埼玉工業大学工学部紀要 / 埼玉工業大学図書・紀要委員会(編) 第22号 2011年 pp. 37-45.

・ 新しいテニスの物理学(ラファエル・ナダルの強烈なトップスピンの謎を解く)
 ジョシュア・スペックマン,川副嘉彦(訳)
 埼玉工業大学工学部紀要,第21号,pp. 33-37 (2011)

・ ラケットのガットとトップスピン
ジェフ・マクドナルド,川副嘉彦(訳)
埼玉工業大学工学部紀要」第21号,pp. 39-40 (2011)