テニスラケットの科学(568)
:コーポリ・ガット(ポリエステル系ストリング)
:実際にはどのような仕組みで機能しているのか(解説記事紹介)⑬
:スナップ・バック Snap-back の意味

● 2005年、国際会議において、 「Spring back スプリング・バック」と表現してKawazoe ら(*)が発表した現象が、J Speckman氏により 「Snap-back スナップ・バック」という表現でメデイアに紹介されたことにより、「Snap-back スナップ・バック」という表現が、今や、テニス用語のように定着しつつあるようです。
・ なぜ、「Spring back スプリング・バック」ではなく、「Snap-back スナップ・バック」なのかが疑問でしたが、
トランジスタ素子関連の工業用語にも(私は全くの専門外ですが!) ” snap back ” という言葉があって、 ”パチンとはじき戻る”というイメージのようです。
・ ストリングに関しても、 J Speckman 氏が表現した ”パチンとはじき戻る”という「Snap-back スナップ・バック」の方が、確かにピッタンコですね!
・ インパクトでは、ボールとストリング面が接触した瞬間から相互に作用する力(復原力)が働き、ボールとストリング面の間に作用する力(復原力)が再びゼロになった瞬間に、ストリング面からボールが離れますが(接触時間)、ボールもストリングも変形が元に戻るのは一瞬です。
・ ボールとストリング面のインパクトでの衝突速度が大きいほど、フラットな打撃(ストリング面のたわみとボールのつぶれが大きい)ほど、接触時間は短く、1000分の2~5秒程度です。
・ スピンは、斜め衝突において、打球方向の力に対して接線方向の力によるものなので、接線力が小さくてもスピンはかかりやすく、ストリング縦糸・横糸の摩擦が大きい場合は、縦糸が横にずれたままで元に戻らず、スナップ・バックが起こりにくいということがあります。

* Yoshihiko KAWAZOE and Kenji OKIMOTO,

Super High Speed Video Analysis of Tennis Top Spin and Its Performance Improvement by String Lubrication,

The Impact of Technology on Sport, ASTA Publishing, (2005), pp. 379-385

 ● 図は、2011年1月に発行された米国雑誌The Atlantic 2011年1月/2月号に掲載されたJ Speckman氏の記事のトップです。