テニスラケットの科学(604)
:テニスにおける科学技術と伝統のバランス
:「令和のプロ野球」からのヒント
● テニスにおける科学技術と伝統のバランス
・ ITF(国際テニス連盟)の第1回テニスの科学技術に関する国際会議2000年におけるITFの科学技術研究所所長 Coe 氏による基調講演「テニスにおける科学技術と伝統の調和」は,多くの示唆を与えてくれます。
(参考資料) 第1回テニスの科学技術に関する国際会議(ITF 国際テニス連盟)報告、川副嘉彦,スポーツ産業学会スポーツ工学専門分科会会報,p.5, (2001)
https://kawazoe-lab.com/research/tenisunokagakugijyutu/
● ”(令和のプロ野球)打たれない球を科学する”
(山口史朗、藤田絢子、加藤秀彬) 2023年9月27日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15752618.html
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■ 高め直球、格言の逆をいく
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” 野村克也監督(故人)の格言がある。
「外角低めこそ、投手の原点」。打者から最も遠くて低い球は長打になりにくい、という理屈だった。
だが、2023年。「高めの直球(フォーシーム)」を基本線に白星を積み重ねる投手が出現した。
今季から先発に転向した西武の平良だ。
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” 平良は言う。
「感覚はあんまりあてにならない。
感覚とデータには、ほとんどズレがある」
日本球界に広く、深く根付いた野村氏の格言とは正反対のスタイルを貫く根拠がある。
その一つが、直球で空振りを取れる確率は、外角低めが5%程度なのに対し、真ん中高めは30%以上というデータだ。
投球動作の解析やデータ分析のサービスを提供する「ネクストベース」の取締役で、投球動作のバイオメカニクスなどを専門とする神事(じんじ)努・国学院大准教授が、年間70万球を超える大リーグの公式戦から分析した。
神事准教授によると、外角低めへの投球はゴロになりやすい。
平良の投球術は、野村氏の格言を否定するものではなく、空振りでストライクを奪う「安全性」を高めるための手法ということだ。
平良は、球団のスコアラーやコーチだけでなく、個人的に提携する同社のスタッフともオンラインで意見を交換する。
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■ 分析装置、武器変え化けた
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” 今、プロ野球12球団の本拠地には、ボールなどの動きを緻密(ちみつ)に解析する「トラックマン」や「ホークアイ」が設置されている。
高精度のレーダーやカメラによって、投球の回転軸やリリースポイント、打球の角度などが数値で明らかになる。
「打たれた球の回転数や変化量などに問題がないのであれば、『狙われていた』『対応された』という仮説を立てられる。
そして次の対策を練ることができる」と神事准教授は言う。
投げた球の質が悪ければ、フォームや疲労などに原因を探る材料になる。
これらの数値をもとに変容を遂げた投手の一人が、ヤクルトの3年目右腕、木沢だ。
150キロ超の直球をひっさげて慶大からドラフト1位指名で入団。
だが、その直球が2軍戦でも通用しなかった。
弾道測定分析器「ラプソード」で、直球にプロの打者を空振りさせるほどの「ホップ成分」がないことが分かった。
ホップ成分とは、投げた球が本塁に届くまでに重力にどれだけ逆らえるかを示す値。
「球の伸び」と表現されてきた視覚的な要素を明確にしたもので、ラプソードではミリ単位での測定が可能だ。
「僕のフォーシームでは150キロを超えても打たれる」。
木沢は現実を受け止めてシュートを磨いた。
この新たな武器を軸に、2年目の昨季は中継ぎとして55試合に投げて9勝。
今季も55試合に登板している(26日現在)。
「ラプソードがなければ、壁にぶつかる時間がもっと長かったと思う。
数値は投げた球に対する採点のようなものです」
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■「感覚」と「データ」、揺れる日本球界 バウアー「両方が必要だ」
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” 大リーグでは15年から、動作解析システム「スタットキャスト」の数値が公開されている。
各球団は統計学や動作解析の専門家ら野球未経験者も採用し、このビッグデータを分析。
独自の育成システムなどを練り上げている。
日本では数年前から12球団が個別に解析ツールを導入し始めた。
データの共有も少しずつ進み、各球団が活用法を試行錯誤してはいるが、飛躍的に広がっているとは言えないのが現状だろう。
日本では、優れた「感覚」で成功した選手が、監督やコーチになるケースがほとんど。
データはその感覚の裏付けにも、否定にもなりうる。
後者への「アレルギー」が、科学の導入を遅らせる一因となっているのは否めない。
DeNAで今季プレーするバウアーは、大リーグでも先進的な選手の一人として知られていた。
球が指先から離れる瞬間を高い解像度で撮影できるハイスピードカメラ「エッジャートロニック」を10年前から使っている。
これは大リーグのどの球団よりも早かったと言われる。
バイオメカニクスなども学び、ラプソードなどの数値と映像をすり合わせながら、変化球を効率的に習得したり、投球の再現性を高めたりしてきた。
日本のプロ野球におけるデータ活用についてたずねると、こう返ってきた。
「野球の発展、選手たちが学ぶという観点でいえば、より多くのデータに触れられる状況になるべきだ。
ただ、最終的な目的は試合に勝つことで、そのための準備はそれぞれ。
こうなるべきだというのはなく、感覚とデータの両方が必要だ」
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