テニスラケットの科学(607)
:テニスラケットの科学(289)の補足1
:インパクトにおいて手首関節(wrist)に伝わる衝撃と振動の実測波形例

● 図1は、フォアハンド・ストローク(フラット)でボールを打撃したときに手首関節(wrist)に伝わる衝撃と振動の実測波形です。
 ラケット面・先端側のオフセンタで打撃した場合なので、 フレームの2節曲げ振動が顕著です。
 インパクトの衝突力波形の後に、残留振動として残っています。
 横軸は時間, 縦軸は加速度実測値で、衝撃・振動により手首に作用する力に相当します。
 衝撃力が作用する時間は、1000分の3秒程度。
 その後に続くのが、インパクトにより励起されたフレーム振動です。
 (参考までに:人間の瞬きは1000分の100秒程度です。)
手首に伝わる衝撃・振動には、 ストリング面の膜としての振動モード(400~600Hz程度、張り上げテンションが高いほど、振動数も高い)は、ほとんど見られません。

図―1

● 図2(d) は、手首に取り付けた加速度センサーの位置を示しています。

図―2

●(参考文献1)
・私のテニス研究遍歴5話(知は現場にあり)
川副嘉彦、
JSEA機関誌「スポーツ工学」,第6号(特集「新分野創設者によるスポーツ工学研究レビュー」),pp.21-31 (2011)
https://kawazoe-lab.com/research/tennis_kennkyuu/
(参考文献2)
・Experimental Study of the Larger Tennis Ball Effects on the Comfort of the Wrist and the Elbow,
Kawazoe, Y., Tomosue, R., Muramatsu, T., Yoshinari, K. and Yanagi, H.,
The Engineering of Sport 4, pp.192-199. Wiley-Blackwell (2002).
https://kawazoe-lab.com/…/experimental-study-of-the…/

● (参考資料1)
・テニスラケットの科学(289)
:テニスラケット性能予測システム (22)
: 概要紹介
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-289/
・ ラケットハンドル、プレーヤの上肢、手首関節に伝わる衝撃・振動のモデルとシミュレーション結果
(フラット打撃:ボールとラケットの正面衝突)の例
(追記)
・ 図1:
 ボールを打撃したときのスイング・モデルです。
 簡単のために、 速度VBOで飛んでくるボールを、 肘と手首の関節角度を一定にして、 肩関節にトルクNsを与え、 90度回転したときのラケット・ヘッド速度VRoで打撃します。
 データは、女子トップ・プロのラリーにおけるフォアハンド・グランド・ストロークのインパクト速度を想定し、Ns= 56.9 N・m、VBO= 10 m/sを与えています。
・ 図2:
・ テニスラケットの構造上、 ストリング面の振動モード(振動の様式・形) は、 ストリング面の中心が腹(振幅が最大)、 周辺のフレームに接する部分が節(振幅最小、振動しない)に当たります。 
 したがって、・フレームのハンドル上の手の握りの位置(グリップ)にはほとんど振動が伝わらないことになります。
・ラケット・フレームの振動モード(振動の様式・形)も、 ハンドル上の手の握りの位置にも振動の節
(振幅最小、振動しない)があり、 適切に設計されたラケットは、 スイートスポットを外れたオフセンター打撃でフレームの振動が大きい場合も、手に伝わる衝撃・振動は大きくはなりません。
・ (ラケットは神の発明品です!)

● (参考資料2)
 テニスラケットの科学(545)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(53)
:ポリエステルとナイロンを組み合わせるハイブリッドのメリットとデメリットの解説に誤解があるようです! 
:誤解の多いストリング面の反発力(インパクトにおけるテンション)とスピン量のメカニズム
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-545/