テニスラケットの科学(8)
グリップ自由の(手の支えのない)ラケットにボールを衝突させたときの各打点の反発力係数 (実測値とシミュレーション計算値)
図は、宙づりの静止ラケット(ヘッド速度VRo=0)にボールを衝突させたときのボールの跳ね返り速度 VBと入射速度 VBo の比eの実測値と予測値です。
この比eの実測値が,メーカーなどではラケットの反発性能の評価によく使われます.
横軸はストリング面上の衝突位置です。
この係数eは,衝突位置における反発係数 er,ラケットの換算質量 Mr,およびボールの質量 m により決まり,比eの値が大きいほどボールの跳ね返りの良さ,あるいはラケットのはじきの良さを表します。
これを反発係数erと区別して「反発力係数」eと定義しています.
「反発力がある」と「反発係数が高い」という表現が混同して使われることが多く、「反発係数」が高いから「反発力がある」という説明がなされますが,「反発力がある」と「反発係数が高い」とは直接対応するものではありません。非常に軽い厚ラケのように、反発係数が高くても,ボールの跳ね返りの悪いラケットもあります。
反発力(係数)が高いラケットというのは、速く振らなくてもボールが良く跳ね返るという意味です.カウンター攻撃が得意なスイング速度が遅いプレーヤーにとって,あるいは時間的余裕のないボレーのときには,この反発性能が打球の速さに直接に影響します。
1-画像:グリップ自由の(手の支えのない)ラケットにボールを衝突させたときの反発力係数(川副研究室)