テニスラケットの科学(293):テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(37): 【ストリング選びに役立つ基礎用語】(2)「テンション」
テニスマガジンONLINE 【ストリング選びに役立つ基礎用語】 2020-10-21* は、初心者には親切な記事だとは思いますが、 「スナップバック」、「テンション」、「反発性」、「ポリエステル」の項目の解説には異見あり!です。
(2) 「テンション」
” 緊張、張力の意味で、ストリングを張るときの引っ張る力。ポンドが単位として使われている。一般的なテンションと言われる50ポンドは22.68キロ。
テンションが高くなると、ストリングは硬く張られ、硬い打球感でボールの飛びを抑えられる。
テンションを低くすると、柔らかい打球感となり、ボールがよく飛ぶ」”
と解説されていますが、
異見あり!です。
・ テンションが高くなると、ストリングは硬く張られ、高い振動数と高い音で硬い打球感が得られる。
テンションを低くすると、低い振動数と低い音で柔らかい打球感となる。
ボールの飛びは変わらない。”
ではないでしょうか?
参考までに実験例を添付します。
(補足:fromテニスラケットの科学(219))
図1は、各種ストリング素材について、(張り上がり)テンションと反発係数の関係を実測したものです。
ストリング・テンションは、52ポンドと62ポンドです。
ストリング素材は、
ナイロン1:Wilson NXT、
ナイロン2:Techfiber NRG2、
ナチュラル(天然)ガット:Babolat Tonic Gut、
ポリエステル1:Polyfiber TCS、
ポリエステル2:Luxilon Alu Power、
ポリエステル3:Luxilon Original、
ポリエステル4:Luxilon ALU Rough
です。
ナイロン、ナチュラル(天然)ガット、ポリエステルというストリング素材の違いによる反発係数の差は見られません。
また、52ポンドと62ポンドというストリングの(張り上がり)テンションの違いによる反発係数の差も見られません。
ポリエステルは反発係数が低い、ポリエステルは飛ばないという専門家による解説が見られますが、先入観(?)による誤解です。
(補足:fromテニスラケットの科学(221))
図2は、ボールとストリング面の反発係数におよぼすストリング・テンションの影響を調べたものです.
横軸は衝突速度、縦軸はボールとストリングの反発係数です。
ボールとストリング面の反発係数は、ボールとストリング面の衝突速度が大きいいほど、わずかですが、低下します。
衝突速度は、通常ストロークでは 20~30m/s程度です.
衝突速度20 m/s では,テンションの高い方が反発係数の平均値はやや低くなっていますが,30m/sではテンションの違いによる反発係数の平均値の差はほとんどありません.
ボールとストリング面の反発係数(COR)は0.8 ~ 0.9 程度で,0.83 に近い値を示しています.
図3は、図2から作成したもので、衝突速度20 m/s と 30m/s の場合について、テンションと反発係数平均値の関係を見ることができます。
衝突速度20 m/s では,テンションの高い方が反発係数の平均値はやや低くなっていますが,30m/sではテンションの違いによる反発係数の平均値の差はほとんどありません.
ボールとストリング面の反発係数(COR)は0.8 ~ 0.9 程度で,0.83 に近い値を示しています.
この実験は,共同研究者であるミラノ工科大学のCasolo, F.教授のもとで,超高速度のインパクトまで測定できる当時では貴重な本格的な実験装置を用いて実施されました.
(参考文献)
Kawazoe, Y., Tanahashi, R. and Casolo, F.,
Experimental and theoretical criticism of the effectiveness of looser strings for the reduction of tennis elbow,
Tennis Science & Technology 2, pp.61-69. (2003). International Tennis Federation(ITF).
この論文は、ストリングを緩く張ることはテニス・エルボー(肘)対策に効果がないことを、実験と理論によって吟味したものです。
(参考文献)
Kawazoe, Y., Tanahashi, R. and Casolo, F.,
Experimental and theoretical criticism of the effectiveness of looser strings for the reduction of tennis elbow,
Tennis Science & Technology 2, pp.61-69. (2003). International Tennis Federation(ITF).
この論文は、ストリングを緩く張ることはテニス・エルボー(肘)対策に効果がないことを、実験と理論によって吟味したものです。