テニスラケットの科学(562)
:コーポリ・ガット(ポリエステル系ストリング)
:実際にはどのような仕組みで機能しているのか(解説記事紹介)⑦
:実際に何が起きているのか(その2)
● 実際に何が起きているのか(その2)
川副教授らは次に,同じガットに潤滑剤を塗ったうえで衝突時の様子を撮影した.
ボールとガットが衝突するごとに40~50コマを撮影して観察することで,ガットの動きとスピンの謎が解明された.
ある種のガットは他のガットよりも強いスピンを発生させるが,これは摩擦が大きいからではなく,摩擦が小さいためであることが分かったのである.
驚いたことに,より強いスピンを発生させるガットは,実際には元の場所からずれないというわけではないのである.
ビデオをクリックしてコマを送っていくと分かるように,潤滑剤を塗布していない通常のガットにボールが衝突すると,何本かのメインのガットがボールとともにずれる.
しかし,元に戻る際に1本のガットはラインからずれたままの状態になり,元の位置に戻らない.
これが,選手たちが従来のガットで目にする現象である.
ガットはすぐにずれて、ずれたままの状態になってしまう.
このビデオを,潤滑剤を塗布したガットのビデオと比べて見て欲しい.
潤滑剤を塗布したガットは,ボールがガットにめり込むとより素早くずれ,しかもずれるガットの本数も多い.
その後,ボールが弾き出される際,メインのガットは弾性によってまっすぐになり,元の位置に戻る.
川副教授らは,このメインのガットが元の位置に戻る動作がボールにさらにスピンを与える力を生み出すことを発見した.
驚くべきことに,潤滑剤を塗布したガットは 40 % も多くのスピンを生み出したのである.
図8
図9
(参考文献)
・(解説記事) コーポリ・ガット(実際にはどのような仕組みで機能しているのか)
ジョシュア・スペックマン (訳:川副嘉彦)
埼玉工業大学工学部紀要 / 埼玉工業大学図書・紀要委員会(編) 第22号 2011年 pp. 37-45.