テニスラケットの科学(220):スピンとストリング(18) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション :ボールとストリング面の反発係数(テンションの影響)の実測値例(2)

 ラケットヘッドを壁に固定して動かないようにして,ストリング面にボールをぶつけたときのボールの反発係数:縦軸は,「(ボールの跳ね返り速度)/(ボールの入射速度(衝突直前の速度)),横軸は「ボール入射速度」です.
 縦軸の目盛を拡大しているので,ストリング素材やテンションによる反発係数に差が多少あるように見えますが,テニスの高速インパクトにおける衝突状況の微妙な違いによって,本質的(カオス的)にインパクト諸量は多少ばらつきます.
 したがって,ボールとストリングの衝突における反発係数実測値の多少の差異は,バラツキの範囲とみなすことができます.(細かく見ても,あまり意味がありません!)
 ラケット・ヘッド固定でのテニスボールとストリング面との反発係数実測値は、約 0.83 程度ということを示しています。
・ (張り上がり)テンション 30ポンドと60ポンドの違いがあっても、ボールとストリング面の反発係数の違いはありません。
 なお、この場合の反発係数(約 0.83 程度)と反発係数1.0との差は、ストリングの反発係数が約0.97(ほとんどエネルギー損失がない)ですから、ほとんどボールの急速変形によるエネルギー損失によるものです。
(参考文献)
川副 嘉彦、衝突現象を考慮したテニスラケットのCAE(ボールとの衝突におけるラケットの応答予測と反発性能の評価指針),日本機械学会論文集. C編 58巻(552号) 1992,pp.2467-2474.