テニスラケットの科学(520)
(備忘録)2020年12月17日投稿
テンションとプレイのマッチング 1995年版(11): Part5  テンションの秘密を科学で探る
実験結果と実際のスウィングの印象の間で、 ギャップはなぜ 起こるのか ⑧
(7) 衝突速度の違いによって、テンションの影響に差が出る-その1

(備忘録)

“ テンションと反発の関係を考える前に、ストリングスの硬さに関する基本を理解しておく必要がある。
 図2は、インパクトによるストリングスの変形によって発生する張力および復原力を簡略に示したものである。
 復原力Fは、インパクトでの張力Sによって生まれる。
 我々がテニス・ショップに注文するときの張り上がりテンション So と、変形により発生する張力 S には大きな差があり、張力 Sは変形量 X が増すと、急激に大きくなる。
 したがって、復原力 F も急激に大きくなる。
 逆に、ストリングスの変形量が大きくなるにつれて、ストリングスをたわませるのに必要な力は急激に大きくなり、硬くなることを意味している。
 図3は、ボールとストリングスを一種のバネとみなしたときの、ボールの変形量、ストリングスの変形量および、両方の変形量の和と、ボールとストリングスの硬さの関係を示している。
 ここで言う「硬さ」とは、バネとしての硬さという意味であり、一定量変形させるのに必要な力を示す。
 つまり、硬くなるということは、同じ 1 ミリ 変形させるのにも、必要な力が大きくなるということである。
 ストリングスを親指で押して見たときの感覚は、変形がゼロに近いときのストリングスのバネの硬さの値に近い。
 そして、ボールとストリングスの合成ばねの硬さがインパクト・タイムを決める。
 インパクトの速度が速くなるほどインパクト・タイムが短くなるのは、このバネの性質によるのである。

(続く)
(参考資料)
テンションとプレイのマッチング:Part5
テンションの秘密を科学で探る
実験結果と実際のスウィングの印象の間で,ギャップはなぜ 起こるのか
川副嘉彦,月刊テニスジャーナル 1995年10月号,pp.55-60.