テニスラケットの科学(530)の補足7
研究の思い出:ナンバ・テニスの研究 :障害予防とパワーアップのためのロバストな「ナンバ・テニス」の提唱 (平衡点不安定を利用する地面を蹴らない動きの生成)

サービスダッシュへのヒント:転倒力の利用
 身体の転倒力(重力)がテニスのサービスダッシュに使えないかというご質問がありましたので,ご参考までに実演風景映像を紹介させていただきます.
 テニス学会20周年(2008年?)記念に甲野善紀先生に講師として来ていただいたことがあって,このとき会場が国立スポーツ科学センターとナショナル・トレーニング・センターだったことで,練習中の鈴木貴男選手が飛び入りで参加してくださいました.鈴木貴男選手がサービスダッシュの改善法(?)について質問されたときに,甲野先生がいくつか回答されたのですが,その一つは,足下のカーペット(?)を不意に後ろに引かれたときに前につんのめって転倒しそうになる例えを使って前に飛び出す動きを説明されました.(映像参照)
 実際には,身体の転倒力を利用するときに,後ろ足を一瞬後ろに引くと転倒速度(棒が倒れる角速度)が加速されるので,転倒する前に前足をさっと出すとスタートが一層速くなる理屈になります.足で蹴る力は不要です. 100メートル走のスタートにも使えそうですが,習熟しないと危険ですね! 
第20回テニス学会(2008年)「今,テニスでできること」,対談「古武術からの発想:スポーツからロボットまで」,講師:甲野善紀,川副嘉彦”より.(ビデオ撮影:川副研究室)
映像:20200116-鈴木vs甲野-サービスダッシュ(T学会2008)-s-kawazoe