テニスラケットの科学(536)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(46)
:ストリングの太さ(ゲージ)とラケット性能➂:ラケットの反発力、飛び(打球速度)、打球感

● <SMASH>2023.04.23 
【テニスギア講座】ストリングの太さによって何が変わる? 耐久性や飛び、打球感への影響を知ろう/前編
 https://thedigestweb.com/tennis/detail/id=67496
にも、ストリングの太さについて解説されていますが、
「異見あり!」です。

● ストリングが細いほど伸縮しやすいため、細いほど反発性が高く、打球は良く飛ぶというスマッシュ誌の記事は、力学的に間違っています。
 インパクトにおけるストリング挙動を示す図1の理論式から、ストリングが太いほど、ストリングが伸びるほど、インパクトでのテンションは増大しますが、太いストリングは伸びが小さく、細いストリングは伸びが大きいので、結局、太くても細くても、インパクトでの(リアル)テンション、すなわちストリング面の反発力、あるいは復原力は、ほとんど違いがないとことになります。
 これらは、実験結果やコンピューター・シミュレーションでも明らかになっています。
 また、ストリング面は、ストリング1本1本が勝手に振動するのではなく、ストリング面は膜として振動し、
打球後にフレームの曲げ振動やねじり振動と複合して残留振動として残ります。
 ストリング面の膜振動の振動数や音の高さは、
ストリング面の張り上がりテンション、
ラケット・ヘッドサイズ、
ストリング・ゲージ太さ、
ストリング素材強度(ヤング率)などによって決まります。

図ー1

● 図2は、各種のストロークについて、トラックマンによる太さと飛び(打球速度)の関係を測定した結果(平均値)です。
・ 横軸は、
フォアハンド・フラット打撃、
フォアハンド・トップスピン打撃、
バックハンド・フラット打撃、
バックハンド・スライス打撃、
フラット・サーブ、
スライス・サーブ、
スピンサーブ
におけるストリングのゲージ太さ3種(1.1 mm、1.2 mm、1.3 mm)、
縦軸は
スピード(打球速度)を示しています。
・予想されるように、
どのショットにおいても、
ストリングのゲージ太さ3種(1.1 mm、1.2 mm、1.3 mm)がスピード(打球速度):平均値におよぼす影響はほとんど見られません。

図―2

*参考資料:
・テニスラケットの科学(325)
:スピンとストリング(69) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション :再度テンションの大誤解を解く(その3)
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-325/

・テニスラケットの科学(471) 
:ストリングのゲージ太さ(直径)とボールの飛び(打球速度)の関係:トラックマンによる測定例: フォアハンド、バックハンド、フラットサーブ、スライス・サーブ、スピンサーブにおける1.1 mm、1.2 mm、1.3 mmの比較
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-471/

(参考資料)
・テニスラケットの科学(234)
:スピンとストリング(32) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション
:(張り上がり)面圧と(インパクトにおける)面圧―まとめ
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-234/

(参考資料)
・テニスラケットの科学(225)
:スピンとストリング(23) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション
:テンションを変えてもボールとストリングの反発係数が変わらないのはなぜか? (その3:まとめ)
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-225/
・テニスラケットの科学(208)
:スピンとストリング(6)
:プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション
:ストリンガーはラケットという「弦楽器」の性能を熟知している「調律師」(名張人)
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-208/