テニスラケットの科学(539)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(49)
:ストリング・テンションとラケット性能② 
:ストリングのテンションを低くしても、ボールの打ち出し角度は大きくならない!

● 「(張り上がり)テンションは打球速度に影響しない」ということは、20年前ぐらいから、Cross とLindseyなどのテニス啓蒙書*にも書かれるようになりましたが、テンションが低いとボールが飛ぶと感じるプレイヤーが多い原因として、「テンションが低いとボールの打ち出し角度が高くなり、ボールの飛距離が伸びる」からだろうという推測は間違いであることを、最近の実測結果は示しています。
*テクニカル・テニス 常盤泰輔 [訳] 丸善プラネット (2011年):Technical Tennis by Rod Cross and Crawford Lindsey (2005)の訳本”
の85頁~86頁。
・ Cross 氏らの推測が間違った理由の一つは、ストリング面の変形挙動に対する推測が超スロー映像の事実と異なっているからです。(図2)

・ 39ポンドと77ポンドのたわみ量の差は2~3ミリ程度です。
  (シミュレーション by Kawazoe)
・ 張ったストリングのテンションが緩くても、たわみが大きくなるほど、ストリング面の構造上、たわみにくくなるからです。
・ストリング面は、ボールが離れる時には、平面に復原しています。(映像、理論的にも)
・ R Cross氏らの著書を読んでテンションを低くしても反発力は変わらないと理解している場合でも、打ち出し角度が大きくなるから飛距離が伸びるという間違いを信じている人は、少なからずあるようです。
● ストリング・テンション(張り上がり)と「ボールの打ち出し角度」の関係について
 ・ストリング・テンション(張り上がり)と打球速度の関係について、テニスラケットの科学(467)において、比較的精度の高い測定器(一般人には高価:200~300万円!)「トラックマン」を使った貴重な測定値を紹介させていただきました。
・フォアハンド(フラット)、バックハンド(フラット)、サーブ(フラット)それぞれについて、
40ポンド、50ポンド、60ポンドの場合の平均値の結果は、
どのショットについても、
「打球速度」は、(張り上がり)テンション 40ポンド、50ポンド、60ポンドの場合に差がないことを示しています。
● 図4は、「テクニカル・テニス(Technical Tennis 2005 の日本語訳本)」の表紙と、Rod Cross 氏から初めてもらった懐かしい自己紹介のメールです(1997年)。
(参考資料)
・テニスラケットの科学(473)
: プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション
:ストリング・テンションと「ボールの打ち出し角度」の誤解を解く ①
:ボールのネット通過高さ(トラックマンによる測定例:参考データ)
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-473/