テニスラケットの科学(593)
:スピン量と打球速度はインパクト(1000分の3~5秒)で決まる⑪
:世界のトップ10・プレーヤの打球速度とスピン(2)
:Mysteries of Medvedev’s Forehand
:スピン量も打球速度も最下位でも、メドベージェフ選手はなぜ勝てるのか?

● ランキング3位のメドベージェフ選手が、全仏オープンのトップ10のプレーヤ10人の中で、スピード(打球速度:初速)もスピン量も最下位であるというデータを、テニスラケットの科学(592)で紹介させていただきました。
 調べてみると、”Mysteries of Medvedev’s Forehand”*という解説記事もあり、この文献*によると、冒頭で、著者は、とても正直に(研究者ですから?)、以下のように述べています。(川副訳)
 ” メドベージェフ選手は、全米オープンで優勝しましたが、彼のボールを打つプレイスタイルは本当に楽しめるものでしょうか?  もし彼が唯一のプレイヤーであるならば、プロテニスの観戦をやめてしまうかもしれません。 しかし、現在のトップ選手またはトップに近い選手のフォアハンドを理解することは重要だと考えます。 私の結論は、彼の成功において技術よりも才能と決意がより重要であるということです。”

 また、文献*では、以下のように述べて、メドベージェフ選手のフォアハンドは依然として謎であると結論しています。
 ” もしメドベージェフがジュニア時代に私に映像を撮ってもらうよう頼んでいたら(実際には頼まれていないけれども)、上記で述べた要素の多く、またはすべてを修正しようとしたかもしれません。もしそれが実現していたなら、彼のフォアハンドは改善されていたでしょうか? それとも、彼がプレイするゲームに対して彼のフォアハンドは既に最適なのでしょうか? フォーラムで皆さんのご意見をお聞かせください!”

● まず、文献*で取り上げられた6つの映像例を紹介させていただきます。 次稿では、フォハンドのスロー映像を分析して、メドベージェフ選手のフォアハンドにおけるインパクトの分析を試みたいと思います。

● メドベージェフ選手のフォアハンド6例(文献*)
・ 映像1:① Does anyone really enjoy watching Medvedev’s forehand?

・ 映像2:② A conservative grip structure and lower preferred contact point.

・ 映像3:➂ Because his left arm doesn’t stretch all the way across and his stance is so open,    Medvedev has somewhat less body turn than most top players.
 (彼の左腕が完全に横に伸びず、また彼のスタンスが非常にオープンなため、メドベージェフ選手は多くのトップ選手よりも体のターンがやや少ない傾向があります。)川副訳

・ 映像4:④ His backswing height means it takes Medvedev 3 or 4 times longer to get to the contact compared to Federer.
 (バック・スウィングが高いので、メドベージェフ選手はフェデラー選手と比較してコンタクト(インパクト)まで到達するのに3~4倍の時間がかかります。)川副訳

・ 映像5:⑤ Daniil makes contact at the edge of the front leg or even behind, has very limited extension, and his followthrough is either around the neck or a reverse back to his right side.
 (ダニーは、前脚の端、またはそれよりも後ろでコンタクトを取り、伸展が非常に制限されており、フォロースルーは首の周りを回るか、逆に右側に戻ることがあります。)川副訳

・ 映像6: ⑥ The mystery of the lean! 
   (傾きの謎!)川副訳

(参考文献)
・ John Yandell,
Tour Strokes:Mysteries of Medvedev’s Forehand,
Tennis player, Volume17, Issue 8, November 2023
(参考資料)
・ テニスラケットの科学(592)
:スピン量と打球速度はインパクト(1000分の3~5秒)で決まる➉
:世界のトップ10・プレーヤの打球速度とスピン(1)
(データ from ATP Average Shot Speed at Roland-Garros 2023)