テニスラケットの科学(596)の補足1
:ヨネックスのラケット:研究の思い出(1)(追記:2020年9月29日)

● ラケット V-CON17 と国際テニス連盟・性能試験用の標準ラケットITFとの比較(衝撃振動の違いのメカニズム)
 ・国際テニス連盟・性能試験用の標準として製作されたラケットITF(27in:680mm,351g)の打球感に関連する性能予測・評価を行いました.
 実験的に同定したラケット・腕系とボールの特性に基づく衝突解析によりボールを打撃したときのラケット・ハンドルと手首の衝撃振動波形を予測し,最近の代表的な市販ラケットV-CON17(ヨネックス製,全長27.5 in, 699 mm, ストリングを含む重量 300g)と比較し,衝撃振動の違いのメカニズムを明らかにしました.

● 図1は、打球時における手首関節の衝撃振動予測結果:グリップ端から7センチの位置(手の中心)を握ってインパクトした場合です. 横軸は時間,縦軸は手首に伝わる衝撃振動加速度です. 位置Bはラケット面の先端側での打撃,Dは面中心での打撃,Fは面の根元側での打撃です. 肩関節トルクはNs= 56.9 Nm, 飛来するボールのインパクト直前の速度 VB0 =10m/sです. ラケットITFに比べて,ラケット V-CON17 の手首関節の衝撃振動の大きさが目立ちますが,なぜでしょうか? 

図ー1

● 図2は,ラケット面先端のA打点で打撃したときの1次振動の初期振幅を示します. ラケットV-CON17とラケットITFのフレーム全体の振動振幅のは大きな違いはありませんが,手の握りの中心に相当するグリップ端から70 mm の位置(〇印で表示)の振幅に大きな違がみられます. これは,ラケットV-CON17が(最近の軽量ラケット一般に言えることですが), ハンドル部分の重量を減らしてラケット全体を軽量化したことが原因です.

図―2

(参考文献)
・ 国際テニス連盟性能試験用ラケットITFの打球感に関連する性能予測と評価,
川副 嘉彦,武田 幸宏,中川 慎理,
ジョイント・シンポジウム : スポーツ工学シンポジウム・シンポジウム:ヒューマン・ダイナミクス講演論文集 2009 2009-12 p.130~135
https://kawazoe-lab.com/res…/vibrations-of-handled-racket/
(参考資料)
・ テニスラケとの科学(596)
:(2023年9月29日初投稿)
:ヨネックスのラケット:研究の思い出(1)