テニスラケットの科学(599)
:(2020年9月29日初投稿)
:ヨネックスのラケット:研究の思い出(4)

● ラケット V-CON17 と世界最大のラケット(ルール変更で違反になった)BIG-BUBBA 137 in2 との比較(ボールの飛び:ラケットのパワーに関連する性能予測と評価を行いました)
“ 国際テニス連盟は,プロの試合では1997年の1月から,一般の試合では2000年の1月から全長が29 in 以上のラケットの使用を禁止した. ラケットの進歩がテニスのプレイ・スタイルを変えたと言われている.しかし,テニスは体験により修得するものだから主観的なものであり,ラケットが実際のプレーにどのように影響するかを客観的に評価することはきわめて難しい.”
“ 本研究では,世界最大(全長,フェイス面積)の市販ラケット BIG-BUBBA 32 in(806mm、287g)のボールの飛びに関連する性能予測・評価を行い, 最近の標準的な市販ラケット V-CON17 27.5 in(698.5mm,300g)と比較し, パワーに関連する性能の違いのメカニズムを衝突解析(1)-(9)に基づいて明らかにする.”

●(追記)
 論文(参考文献)の結論を要約すると、以下のようになります。
・ 最大市販ラケットBIG-BUBBAの性能予測結果は,最近の代表的ラケットV-CON17 に比べて,フォアハンドストロークを想定した打撃において,予想外に振動振幅が小さく,ボールとラケットの反発係数が高く,ラケット面先端側で打撃した時に特に高い.
・ ヘッド根元側に取り付けてあるダンパーが多少は効いているのかもしれない.
・ 全長が長くてフェース・エリアが大きいので,軽量にもかかわらず打点に換算した換算質量はわずかであるが大きく,インパクト直前のラケット速度およびインパクト直後の打球速度が速かった.
・ また,オフセンター打撃における面安定性もよい.
・ しかし,プレイヤーの身体操作による技術向上やラケットの操作性の観点からは性能の差異は十分大きいとは言いがたく, テニスのパフォーマンスの向上は,ラケットそのものの性能向上によるというより,
 ラケットの変化がプレーヤーのパフォーマンスの変化のトリガーになっているとみなすべきであろう。

(参考文献)
・世界最大のテニスラケットBIG-BUBBAのボールの飛びに関連する性能予測と評価
川副 嘉彦,池崎 悠,吉成 啓子,ジョイント・シンポジウム講演論文集 : スポーツ工学シンポジウム : シンポジウム:ヒューマン・ダイナミックス 2007 2007-11-13 p.112-117
https://kawazoe-lab.com/research/big-bubba2/