テニスラケットの科学(612)
:打球感のメカニズム
:インパクトの衝撃はどのように手に伝わるか⑤
衝撃と衝撃反力:
発生する衝撃力と、手に作用する衝撃反力は別のもの
(標準的なグリップ位置で、ストリング面中心で打つ場合は、どのラケットも手に伝わる衝撃反力は大きくはない)
● 図5は、グリップを持つ位置と、そこに作用する衝撃反力の大きさの関係(打撃点:ストリング面中心)を示しています。 ストリング面(打球面)のほぼ中心でボールを打ったときの計算結果です。
縦軸の衝撃反力SRが、 プラスの場合(0の線より上)は、手はボールに押されるような力を受け、 マイナスの場合はボールが跳ね返る方向に引っ張られるような力を受けます。 SR=0 の場合は手に伝わる衝撃反力がないことを意味しています。
・ グラフを見ると(図5)、 ストリング面のほぼ中心で打撃するときは、 標準的なグリップ位置70mmの場合、 従来型重要バランスのノーマル(100平方インチ、張り上げ360g)と厚ラケ(100平方インチ、重量が大きい、張り上げ370g)の衝撃反力はやや大きいですが、 他のラケットの衝撃反力は小さい結果になっています。 中でも デカラケ(110平方インチ、張り上げ366g)、
従来型重量バランスの超デカラケ(120平方インチ、張り上げ349ℊ)、 超軽量トップヘビー(100平方インチ、張り上げ290g)は特に衝撃反力が小さくなっています。
・ テニスラケットの科学(610)では、ストリング面中心打撃、標準的なグリップ位置70mmでは、 インパクトの衝撃の大きいラケットは、 デカラケ(110平方インチ、張り上げ366g)、 超デカラケ(超軽量トップヘビー、120平方インチ、張り上げ292g)、超デカラケ(従来型バランス、120平方インチ、張り上げ349ℊ)、 厚ラケ(100平方インチ、張り上げ370g)、 超軽量トップヘビー(100平方インチ、張り上げ290g)、 ノーマル(100平方インチ、張り上げ360g)の順になっていましたので、 インパクトの衝撃の大きさと手に伝わる衝撃反力の大きさが別物ということが、この計算結果からもわかると思います。
●(考察)
・インパクトの衝撃が大きいほど、ボールを跳ね返す反発力が大きいので、 ストリング面中心打撃、標準的なグリップ位置70mmでは、 デカラケ(110平方インチ、張り上げ366g)が最も反発力が大きく、手に作用する衝撃反力も非常に小さいという結果になっています。 このラケットは、昔、サバティーニ選手が使っていたラケットと同じ種類で、(私事ですが、)川副も、中年になってダブルスをメインにするようになってからは、長く愛用していました!
(続く)
(参考文献)
・Yoshihiko KAWAZOE,
Mechanism of Tennis Racket Performance in terms of Feel,
Theoretical and Applied Mechanics, Vol.49 (2000), pp.11-19.
(参考資料)
・川副嘉彦、
ラケットの科学II-⑤、
月刊テニスジャーナル,12巻12号(1993年12月号), pp. 78-83.