テニスラケットの科学(857)
:(備忘録;解説記事 1998年)
ラケットの性能評価とテニス肘
:スポーツ工学からのアプローチ*(その2)
:感覚的性能評価とスポーツ工学
(ラケットの性能を予測する,球離れが良いラケットとは,はじきの良いラケットとは)
*川副嘉彦(埼玉工業大学),製品と安全,第68号(平成10年),pp.2-9,1998.製品安全協会
4.感覚的性能評価とスポーツ工学
4.1 ラケットの性能を予測する
スポーツは体験により習得するものだから,きわめて主観的なものである。
したがって、スポーツ用具が実際のプレーにどのように影響するかを客観的に評価することは難しい。
しかし、最近のスポーツ工学の成果により多くの謎が少しずつ明らかになりつつある。
ここでは,テニスラケットの性能予測と評価についての著者らの研究成果(文献3,4)を紹介し,ボールの飛びが良く,しかも腕への負担を軽減するラケットについて考えてみる。
画像1:

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4.2 球離れが良いラケットとは
「球離れが良い」という感覚的な評価がある。
一般に「高剛性ラケットは球離れが良い」と経験的に言われている.
また、これと反対の性質として「ボールのホールド感がある」という表現もある。
テニス専門誌などでは、「玉離れが良い」ことは「接触時間が短い」ことと解釈されることが多い.
しかし,実験結果や予測結果によると,接触時問にはフレーム剛性はほとんど影響しない。
さらに、ラケット・フレ一ムの剛性が高いほど反発係数は大きい。
したがつて、これらのことから、「玉離れが良い」という表現は物理的には「反発係数が高い」と解釈できる。
図1 は、木製ラケットと厚ラケの反発係数を予測した例である。
この場合のスイング・モデルが図2 であり、グランド・ストローク (バウンドしたボールを回転をかけないで打撃) を想定している。
手首と肘の関節角度を一定に保って肩関節だけに一定の回転トルクを与え、腕とラケットが肩関節まわりに 90 度回転したところでボールを打撃する。
飛んでくるボールの速度は 10 m/sであり、スイング速度は20年前の女子トッププロのラリーにおける速度に近い。
図1 の横軸は、ラケット面中心から測った先端側と根元側の打点までの距誰であり、厚ラケの反発係数は先端側でもあまり低下しない。
図1 は縦方向 (長手方向) の中心線上の打点の場合であるが、縦方向の中心線から横に大きく外れたオフセンターでも厚ラケの反発係数は木製に比べて低下が少ない。
ラケットにより多少異なるが、「反発係数」はラケット面のほぼ中心で最も高く、ボ一ルとラケットの衝突速度が大きいほど「反発係数」は低下する。
ラケット面の中心近くで打撃すれば、衝突速度が大きくても「反発係数」は大きくは低下しない。
図1:

図ー1
図2:

図ー2
4.3 はじきの良いラケットとは
「ラケットの反発性能が良い」、「反発力がある」、「はじきが良い」という表現が同じ意味で用いられている。
しかし、これらの表現と「反発係数が高い」という表現が混同して使われることが多い。
「反発係数」が高いから「反発力がある」という説明がなされるが、「反発力がある」と「反発係数が高い」とは直接対応するものではない。
非常に軽い厚ラケのように反発係数が高くても、ボールの跳ね返りの悪いラケットもある。
「はじきの良いラケット」とは、ラケットを振らないでボールを当てただけのときに良く跳ね返るラケットと考えたらわかりやすい。
ラケットを速く振らなくてもボールが良く飛ぶという意味である。
著者は「反発性能」〈跳ね返りの良さ〉の評価には、「反発係数」と区別して「反発力係数」という用語を最近定義して使ってぃる。
「反発力係数」はラケット面の根元側ほど高い。
「反発力係数」の予測値は、宙づりラケットにボ一ルを衝突させたときの実測値によく合う。
スイング速度が遅いプレーヤーにとって、あるいはボレーの(ネットの近くで相手のボールがバウンドする前に打つ)ときには、この反発性能を表す「反発力係数」が打球の速さに影響する。
「反発係数」が高くて、打点に換算した換算質量が大きいラケットほど、反発性能を表す「反発力係数」は高いことになる。
反発性能 (「反発力係数」) には、反発係数よりも換算質量 (一般に先端側が重ぃトップへビーのラケットが大きい) の方が効く。
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《文 献》
3) 川副嘉彦・友末亮三、
テニスのインパクトにおけるラケットのスイート・エリアの予測(反発係数、 反発力,ボールの飛び)、
日本機械学会創立100周年記念スポーツ工学シンポジウム講演論文集、No.97-10-2(1997) , pp.66-73.
4) KAWAZOE,Y., TOMOSUE, R. & MIURA, A.,
Impact Shock Vibrations of the Wrist and the Elbow in the Tennis Forehand Drive,
Proc. Int. Conf. on New Frontiers in Biomechanical Eng., (1997), pp.285-288.
”
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*川副嘉彦,ラケットの性能評価とテニス肘:スポーツ工学からのアプローチ,製品と安全,第68号(平成10年),pp.2-9,(1998).製品安全協会.
https://kawazoe-lab.com/…/performance-evaluation-of…/
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(参考記事)
・テニスラケットの科学(856):
(備忘録:解説記事 1998年)
ラケットの性能評価とテニス肘:スポーツ工学からのアプローチ*(その1):
1.はじめに
2.テニスラケットはどう変わってきたか
3.ラケットとテニス肘
(続く)
*川副嘉彦(埼玉工業大学),製品と安全,第68号(平成10年),pp.2-9,1998.製品安全協会
