テニスラケットの科学(858)
:(備忘録;解説記事 1998年)
ラケットの性能評価とテニス肘
:スポーツ工学からのアプローチ*(その3)
:感覚的性能評価とスポーツ工学: ボールの飛び,面安定、コントロール
*川副嘉彦(埼玉工業大学),製品と安全,第68号(平成10年),pp.2-9,1998.製品安全協会

画像ー1

画像ー2



“ 4.感覚的性能評価とスポーツ工学
4.4 ボールの飛び
 「ボールの飛びが良い」あるいは「パワーがある」という感覚的な性能評価が一般になされている。
 これらの意味は同じであり、 ラケットの「パワー」は、「ボールの飛びの良さ」で評価できる。
 これらの表現も、「反発力が良い」や「はじきが良い」、あるいは「反発係数が高い」という表現としばしば混同して使われる。
 しかし、「ラケットの反発性能が良い」、「反発力がある」、「はじきが良い」などの反発性能に関する表現に対応する「反発力係数」と「ボールの飛び」とは、直接対応するものではない。
 ボールの飛びは、スイングしたときのラケット・ヘッド(衝突直前のラケットの打点位置の)速度と「反発力係数」とで決まる。
 「反発力係数」が低くても、振りやすいラケットは「ボールの飛び」が良い。
 逆に、振りにくくても「反発力係数」が高いラケットは「ボールの飛びが良い」。
 したがって、飛んでくるボールの速さとスイングの速さの兼ね合いで,同じラケットでも「ボールの飛び」に関する性能は変わってくる。
 ボレーやレシーブでは「反発力係数」の高いラケットが、サーブではスイングの速いラケットが「ボールの飛びが良い」ことになる。
 また、スイングの遅いプレーヤーは「反発力係数」の高いラケット、スイングの速いハードヒッターは「振りやすい」ラケッ卜を使った方が、 ボールの飛びは良い。
 画像3:

画像ー3


 図3 は、図2 のスイング・モデルを用いてグランド・ス卜ロ一クにおけるボールの飛びを予測した例である。
 ラケット面の先端側と中心で打撃したときの7 種類のラケットの比較である。
 ラケットAは 100平方インチ、 ストリングスを含めて360 gの従来型質量バランスのラケット (剛性低い)、
 ラケットBは 100平方インチの典型的な厚ラケ〈剛性が非常に高い、従来型質量バランス、370g)、
 ラケットCは 100平方インチの超軽量ラケット(剛性高い、290g)、
 ラヶットDは 110平方ィンチのデカラケ(剛性は普通、従来型質量バランス、365g) 、
 ラケットEは 120平方インチの大型 (剛性普通、従来型質量バランス、349g)、
 ラケットFは大型・超軽量のラケット (120平方インチ、剛性ふつう292g)、
 ラケツトGは木製 (68平方インチ、375g) である。
画像4:

画像ー4


(補足:詳細データ)
 ラケットG:(木製,ウッド)
・全長:685 mm (27 in),
・打点領域:440 cm2 (68 in2),
・質量:375 g,
・ストリング・テンション:50 lb,
・ラケット面中心位置(グリップ端から):533 mm,
・重心位置:ラケット・手系の重心位置:335 mm,
・重心周りの慣性モーメント:14.8 gm2,
・グリップ端から70mm周りの慣性モーメント:41.2 gm2,
・フレーム主振動数(2節曲げ):103 Hz,
・重心周りの周期:1,291 s,
・縦中心線周りの周期:1.023 s,
・横方向(縦中心線周りの)の慣性モーメント:0.937 gm2
 ラケツト面中心でボールの飛びが良いのは、
ラケットF(120平方インチ、剛性ふつう、292g) が1位であり、
ラケットC (100平方インチ、剛性高い、290g) が2位、
ラケットE (120平方ィンチ、剛性ふっう、349g) が3位、
ラケットD (110平方ィンチ、剛性ふつう、365g) が4位、ラ
ケットB (100平方インチ、剛性がひじように高い、370 g) が5位、ラケットG (68平方インチ、木製、剛性低い、375g) が6位、
ラケットA (100平方インチ、360g、剛性低い) が最下位である。
F 、C、 E、 D、 B、 G、 Aの順になっている。
先端側の打撃では、ボールの飛びが良いのは、F、 E、 C、 D、 B、 G、 Aの順になっている。
「ボ一ルの飛びの良さ」 は打点によっても多少異なるが、超軽量・大型ラケットFは、根元側の横のオフセンターを除くと、上級レベルのグランド・ストロークのラリーを想定したスイング・モデルでは、最もボールの飛びが良い。
4. 5 面安定、コントロール
 「反発力係数」はラケット面の根元側ほど高〈、ラケット速度は先端側ほど速い。 また、ラケット面の縦の中心線を大きく外れると「反発力係数」は大きく低下し、軽量ラケットほど低下が顕著である。
 スィングの速さとラケットの組み合わせにより、ラケット面上の「飛びの良い」領域も異なってくる。
 コントロール性能は、ねらったところにボール を打てるという意味で使われる。
 実際のプレーに おけるラケットのコントロール性能には、ボールの回転(スピン)が関係してくるから、その予測・ 評価は難しいが` 面安定性も一っの要素であろう。
 ラケット面上のボールの飛びの良い領域を予測すると、たとえば大型・超軽量のラケットF (292g)は、同じサイズのラケットE (349g) よりも最も飛びの良い領域 (飛びに関するスイートエリア)は広いが、ラケットEの方がオフセンターで打撃しても安定な飛び(面安定性) を示す。
一般に大型で重いラケツトの方が面安定性は増すが、 面安定性が増すと操作性は悪くなる。
 さらに、インパクトにおいてボールがラケット面から離れるときのフレームの変形状態もボールのコントロールに関与する可能性がある。
 ラケットのコントロ_ル性能の評価は未解明であり、今後の重要な研究課題である。


《文 献》
3) 川副嘉彦・友末亮三、テニスのインパクトにおけるラケットのスイート・エリアの予測(反発係数、 反発力,ボールの飛び)、日本機械学会創立100周年記念スポーツ工学シンポジウム講演論文集、No.97-10-2(1997) , pp.66-73.
4) KAWAZOE,Y., TOMOSUE, R. & MIURA, A., Impact Shock Vibrations of the Wrist and the Elbow in the Tennis Forehand Drive, Proc. Int. Conf. on


ラケットの性能評価とテニス肘:スポーツ工学からのアプローチ*(その3)
*川副嘉彦(埼玉工業大学),製品と安全,第68号(平成10年),pp.2-9,1998.製品安全協会
https://kawazoe-lab.com/…/performance-evaluation-of…/