テニスラケットの科学(884):
(備忘録:解説記事 2003年) 
テニスラケットの素材・構造と性能*(その6)
3.感覚的性能評価とスポーツ工学による性能予測
3.5 コントロールと面安定性
*川副嘉彦,テニスラケットの素材・構造と性能,バイオメカニクス研究(日本バイオメカニクス学会誌),(特集:素材とスポーツ)、第7巻2号,(2003), pp. 136-151.

(続き)
3.5 コントロールと面安定性
コントロール性能は,ねらったところにボールを打てるという意味で使われる.
実際のプレイにおけるラケットのコントロール性能には,ボールの回転(スピン)が関係し,ボールに適度なスピンを与えたときに,コントロールされた鋭いボールが相手の足下に飛んでいく.
どのようなラケットがスピンに関連したコントロール性能に優れているかについてはわかっていないが,面安定性もコントロールを良くする一つの要素であろう。
図15は,オフセンター打撃においてボールがストリング面に接触してから離れるまでにインパクトによりラケット面が傾く回転角の計算例である.
長手軸(ラケット面の長軸)から横のオフセンターで打撃した場合であり,横軸は長軸からの距離である.
ラケット面の長軸から外れた横のオフセンター打撃では,先端側ではラケットは長軸まわりに回転しないが,面の中心から根元側では,超軽量型( 290 グラム)のラケット面はインパクトで瞬間的に 10 度 近く 傾く.
このようにインパクトの瞬間(約 3/1000 秒間)にラケット面が傾くと,ボールの方向が意図した方向とずれることになる.
したがって,面安定性という意味でのラケットのコントロール性は,従来重量バランス型( 370 グラム)の方が多少良いということになる.

画像ー1

画像1:図15 オフセンター打撃での面安定性

(補足)
画像2は,ラケット面・長軸上の打点での打撃において,ボールがラケット面(ストリング面)から離れるまでに衝撃によってラケット面が傾く回転角である.
図(a)は腕の換算質量を無視した場合を示しており,腕の重さを考慮したのが図(b)である.
ラケット単体の場合(図(a):軽く握っている場合に相当)は,先端側打撃のほうが瞬間的に傾く面の角度が大きいが,ラケットを手でしっかり持った場合(図(b))は,先端側打撃でも,ラケット面中心で打撃した場合とほとんど同じ( 2. 5 度)になる.
先端側打撃と根元側打撃での傾き角の差も小さくなり,どの打点で打っても傾き角がほぼ一定に近い.
また,全体的に従来重量バランス型( 370 グラム)の方が,やや傾きが小さい.

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画像2:ラケット面長手軸上の打点での打撃におけるボール・コントロールとラケット面の安定性
(インパクト時の重心まわりの回転角)

画像3におけるラケット面の斜線部分は,ボールが当たったときにラケット面が中心軸(長軸)まわりに回転する(ブレる)打点を示している.
白いところに当たった場合は,ラケットはグリップ位置の近くを支点にして後方に回転する(傾く).
超軽量型( 290 グラム)のほうが,ラケットがブレる打点の範囲が広いことがわかる.

画像ー3

画像3:インパクトにおいてラケットが横回転する打点の比較

(引用文献)
・川副嘉彦,テニスラケットの素材・構造と性能,バイオメカニクス研究(日本バイオメカニクス学会誌),(特集:素材とスポーツ)、第7巻2号,(2003), pp.136-151.
https://kawazoe-lab.com/research/tenisutakettonosozai/

(補足:参考記事)
ラケットとボール・コントロール
(・テニスラケットの性能 ・スピンのメカニズム ・ポリエステルが主流に ・コントロールと面安定性),
川副嘉彦(分担執筆)、
スポーツの百科事典,pp. 699 – 701,丸善株式会社,(2007.1)
https://kawazoe-lab.com/research/racket-and-ball-control/

(続く)