テニスラケットの科学(534)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(44)
:ストリングの太さ(ゲージ)とラケット性能①

● 最近のテニス雑誌「スマッシュ(日本スポーツ企画出版社発行)」2023年3月号33頁「ストリング基礎知識」に、「太いストリングのメリット・デメリット」に関する以下のような Q & Aが掲載されていますが(図1)、その回答(A)に「異見あり!」です。

Q(読者の質問):太いストリングのメリットやデメリットを?(テニス歴4年)    
A(スマッシュ誌の回答:太いストリングは反発力が下がる)は、測定結果と異なります! 理論的根拠がありません!(異見あり!)
A(スマッシュ誌の回答:太いストリングはスピン量が減る)
は、測定結果と異なります! 理論的根拠がありません!(異見あり!)
A(スマッシュ誌の回答:細いストリングはボールの飛びが良くなり、スピン量も増える)は、測定結果と異なります! 理論的根拠がありません!(異見あり!)

図ー1


● また、 「スマッシュ」誌2023年2月号33頁「ストリング基礎知識」にも Q & Aに「極細ストリングを使うメリットやストリングと相性の良いプレーヤー(プレイスタイル)があれば教えてください」という質問がありますが(図2)、3月号と同じような回答がなされており、これも「異見あり!」です。

図―2

● 精度の高い測定器と言われている「トラックマン」を使った試打ラケTVの測定値をグラフ化したものが図3(ストリングの太さは打球速度に影響しない!),図4(ストリングの太さはスピン量に影響しない!)です。
・図3と図4は、ストリングゲージ(太さ、直径)1.1mm、1.2mm、1.3mm の3種類の太さについて、
フォアハンド・フラット、フォアハンド・トップスピン、バックハンド・フラット、バックハンド・スライス、フラット・サーブ、スライス・サーブ、スピン・サーブの場合のトラックマンによる測定結果をグラフ化したものです。
それぞれ、「ストリングの太さは、打球速度に影響しない。ストリングの太さは、スピン量にも影響しない」という結果を示しています。
(注)多少のバラつきがありますが、テニスのインパクトの実験、特に実打実験では(一般的にも)、2%以下の差異は、バラツキ(カオス現象!)の範囲と考えられています。

図ー3


図―4


● 「ストリングの太さは打球速度やスピン量に影響しない」という理論的根拠についても説明できることだと思いますので、別報で紹介させていただく予定です。
● 図5は、トラックマンの紹介です。
  学術的な論文にもトラックマンによる測定結果が掲載されており、信頼性について検証した論文もあるようです。ただし、個人で購入するには高価です。
 最小構成でも500万円?はするようです。

図―5

(参考資料)
・ テニスラケットの科学(471):ストリングのゲージ太さ(直径)とボールの飛び(打球速度)の関係
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-471/
 ・ テニスラケットの科学(472):ストリングのゲージ太さ(直径)とスピン量の関係
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-472/
を参照。